コンサルタントの酒井です。
最近はほとんど読んでいないですが、一時期小説にハマった時期がありました。今から4、5年ほど前でしょうか。
とくにハマって読んでいたのは、伊坂幸太郎氏が書いたもの。映画化されている小説もたくさんあるので、ご存知の方も多いかもしれませんね。
『陽気なギャングが地球を回す』『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュストーリー』『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』などなど、その当時出版されていた作品は短編も含めてすべて読みました。
伊坂幸太郎氏の小説の特徴は、なんと言っても巧みな伏線の描き方です。
本当に細かいところにまで仕掛けが張りめぐらされていて、そのすべてが回収されたときの感動と高揚感は体験した誰もがハマってしまうのではないかと思うほど。
「単なる脇役だと思っていたら、まさかこんな重要な役割を担っていたとは…」読後感が爽快なのです。
気になる方は、ぜひ読んでみてください。
営業にとってのハッピーエンドとは、目標を達成すること
さて、小説でもドラマでも最後にハッピーエンドで終わるかどうかは重要なことですよね。最終的に書き手の意図によるものですが、我々、営業にとっては、ハッピーエンドで終わることを意図しなければなりません。
つまり、ハッピーエンドとは、目標を上回って着地するということです。
「いろいろな葛藤や衝突があり、一時期、諦めかけていた目標だったけれど、ある出来事をきっかけにしてもう一度がんばろうと思い立ち、新たな試練を乗り越えて、見事に最後の最後に目標達成できた」こんなストーリーですね。
ちょうど前回の私のブログはまさにそんなお話を紹介しました。ブログ「目標達成には”シナリオ”が必要」
Sさんのお話を引き合いに、「最低でも目標達成させるためのシナリオ=予材管理」とご説明しました。
予材管理とは、目標未達成リスクを回避するため、あらかじめ目標の2倍の営業材料(予材)を仕込み、営業活動をマネジメントする手法です。
マネジメントする「予材」は、状態に応じ「見込み」「仕掛り」「白地」の3つに分類します。
予材管理を始める3つの手順
すぐに予材管理シートを使って運用開始するのではなく、以下の手順を踏んでいくのが基本です。
1. 予材ポテンシャル分析
今すぐ仕事をくれるお客様ではなく、今すぐかどうかは別にして、ポテンシャルのあるお客様を客観的なデータに基づきリストアップします。(このポテンシャルのことを“市場のポテンシャル”と言います)
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2. 種まき活動
「予材ポテンシャル分析」によって、リストアップされたお客様をKPIカウントシートに書き出し、種まき活動を開始します。(電話、訪問、来店型であればアンケート収集など)
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3. 水まき活動
種まき活動によって得られたお客様のデータベースに基づき、水まき活動を開始します。
いきなり売り込みをするのではなく、お客様に役に立つ情報を繰り返し提供し続けることがポイントです。
この水まき活動を通じて、「何かあったときは、○○さんに相談しよう」とお客様に思ってもらうことが狙いです。
またこの水まき活動を通じて、現在お客様が困っていることや将来の予定などを情報収集し、自社との将来的なポテンシャルを探ります。(このポテンシャルのことを“営業・マーケティングのポテンシャル”と言います)
4. 収穫
将来的なポテンシャルがあるお客様(予材資産)として水まき活動をし続けたお客様のなかから、具体的な提案をしていくのが収穫というプロセスです。
先に述べた3つの予材のうちの「白地」というのは、具体的な提案をする前の仮説段階であり、「仕掛り」というのは、具体的な提案をした後のことを指します。
そして、「仕掛り」の状態から「内示をもらった」など確実に受注できる状態を「見込み」として管理します。
拡張といって、一度でも自社と取引実績のある既存のお客様に対して水まき活動をおこない、4. のプロセスに進むものもあります。
重要なポイントは、1.2.3.のプロセスを経て、ようやく予材管理がスタートするということです。
つまり、目標未達成リスクを回避するため、あらかじめ目標の2倍の予材(「見込み」「仕掛り」「白地」)を仕込むためには、1. 予材ポテンシャル分析によりポテンシャルのある自社にとって“行くべき先”を定め、2. 種をまき3. 水をまき続けるプロセスが必要だということです。
水まき活動で重要な点「誰に水をまくか」
そして、もう一つ重要なポイントは、水まきのプロセスにおいて、「誰に水をまくか」ということです。
前述したとおり、現在お客様が困っていることや将来の予定などを情報収集し、自社との将来的なポテンシャル(=営業・マーケティングのポテンシャル)を探ることが水まき活動の目的です。
しかし、水まき活動をしていても、営業・マーケティングのポテンシャルが掴めないケースがあります。(とくに法人営業において)その理由はひとつ、「会うべき人に会っていないから」。
つまり、水まきする人を間違えているのです。
たとえば、受付の方に水まきをし続けても、次に繋がらないのは容易に想像できるでしょう。
また、担当窓口の人にだけ水まきをし続けても、次に繋がらないこともあるでしょう。
見積りを提出したあと、フォローすると「上司にだめだと言われてしまいました」というのはよくあることではないでしょうか。
ですから、受注から逆算して、今会えている人ではなく、どんな人に対して、どんなアプローチをしなければならないのかを考えることが必要です。
組織営業に欠かせない「予材配線図」
それをまとめる道具が「予材配線図」です。
「予材配線図」とは、「お客様の誰に、自社の誰が、何をしなければならないのか?」をまとめるものです。
営業部全員で、セリングプロセス(種まき・水まき・収穫・拡張)ごとにまとめることで、営業活動の標準化をすることができます。
つまり、それまで各営業の個人まかせだった営業プロセスを「組織営業」に変えていくのに欠かせないのが「予材配線図」の設定なのです。
- 予材配線図で、組織であらかじめ定めた「会うべき人」に会っているか?
- 会うべき人に対して、「やるべきこと」をやっているか?
これらを組織のルールにして、マネジメントしていくのです。
※予材配線図について詳しく知りたい方は、日経ビジネスオンラインの記事が参考になります。
※「営業→収穫」「ファン化→拡張」と変換してお読みください。
営業にとって、「目標達成=ハッピーエンド」です。
そのためには、お客様に対して正しいプロセスで営業活動をおこない、それぞれのお客様から受注というリターンを得ていかなければなりません。
お客様ごとに受注というハッピーエンドのシナリオを描き、そのシナリオに基づいて淡々と活動をおこなっていくのです。
シナリオを描くうえで欠かせないことは、以下の2つです。
- お客様のなかで、どんな役割を担っている人に登場していただく必要があるのか考え、今会っている人にキャスティングしていただく
- 自社のなかで、どんな役割を担う人物が各プロセスにおいて必要なのか考え、キャスティングする
予材にはかならず人が紐付きます。
【白地→仕掛り→見込み】と予材の状態を変化させていくためには、予材配線図を作ったうえで、登場人物を漏れなくKPIカウントシートに書き出して、接触をしていくことが必要なのです。
伊坂幸太郎の小説の特徴は、なんと言っても巧みな伏線の描き方にある、と冒頭で書きました。
本当に細かいところにまで仕掛けが張りめぐらされていて、そのすべてが回収されたときの感動と高揚感は体験した誰もがハマってしまうのではないかと思うほどです。
「単なる脇役だと思っていたら、まさかこんな重要な役割を担っていたとは…」
営業は、ハッピーエンドのストーリーを作る脚本家です。まさに張り巡らせた予材配線にはすべて意味があります。
そのすべてが受注に至ったときに、その予材配線は回収されるのです。
そのときの感動と高揚感は体験した誰もがハマってしまうものです。達成感が爽快なのです。
この爽快な達成感を味わいたい方は、ぜひ上記の1.2.3から予材管理を始めてみてください。