コンサルタントの岩山です。
先日、ある会社の経営企画部の方とお話ししていたときのこと。
その会社の営業部門は、「毎年の目標は、おおむね達成している」ものの、社長にはある不安事がありました。
それは、「組織風土」です。
今すぐ打ち手を打たなければならないほど、業績が悪くて困っているわけではない。目標を達成する期も、もちろんある。また、未達成の時だって、達成まであとちょっと! とイイ所まできた。
でも、いかんせん「組織風土がいい」とは言い難い。
例えば、
▼成長意欲・熱意に欠ける
▼考える力が弱い
▼上司と部下のコミュニケーションが希薄
▼マネジャーが部下を放置している
▼やり切る習慣が組織にない
・・・などが組織に蔓延(まんえん)している。
その状態を何とかできないものか。つまり、あたりまえのことをあたりまえにできる組織にしたい。
社長は、そんな思いを抱えているのです。
組織改革をしないと、どうなる?
組織をもっと良くしたい。そう考える経営者や経営幹部は後をたちません。
それもそのはず。
これだけの売り手市場の時代です。大企業や上場企業ですら、採用難のため人材確保に頭を悩ませている。それが中小企業ともなれば、余計なおさらでしょう。
加えて、日本はすでに人口減少が始まっている。
団塊の世代が退職をむかえ、ヒト不足なのになかなか人材が確保できない。そのしわ寄せは既存社員の肩に重くのしかかり、現場の疲弊は止まらないどころか、加速する。
しかし、転職市場で見ると売り手(求職者)が優位な状況ですから、優秀な社員ほど「もっと条件のいい会社に移ります」と、退職を申し出る・・・
そうなると、企業の存続自体に大きな影響が出ることは間違いありません。
ですから、今のうちに少しずつでも組織改革をおこない、さらに組織を良くしなければ、いくら人材が欲しくても集まらない。
そうしなければ、近い将来、今以上の本格的なヒト不足にあえぐのは目に見えている。
多くの経営者は、すでにそのことに気づいています。
組織風土が先か?売上が先か?
そんな時、毎回のように議論にあがるのは組織改革にあたって、組織風土が先か? 売上(財務の健全化)が先か?ということ。
結論からいうと、風土と財務、どちらも重要です。
というより、その両方が満たされてはじめて組織は良くなる、つまり「改革された」と言えるからです。
その一例として、「日本でいちばん大切にしたい会社」を考えてみましょう。
書籍「日本でいちばん大切にしたい会社」は、シリーズ累計70万部を超える大ベストセラー。
著者は、当社アタックスの顧問である、元法政大学教授・坂本光司先生です。
トヨタ自動車の豊田社長も学ぶ、伊那食品工業の年輪経営。TV番組「カンブリア宮殿」でも紹介された未来工業。書籍「ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み」で、一躍その名を世の中に知らしめた、日本レーザー。
こうした「超優良企業」は、企業規模は大きくないものの、例えば20名の採用枠でも2,000人が集まる。また、離職率は業界平均と比べると圧倒的に低い。
なぜなら、財務が健全であるのと同時に、そこで働く社員が毎日イキイキと働いている。言い換えると、非常に組織風土が良い。そのどちらをも実現させている、「いい会社」だからです。
ただし、「実際、ウチの会社がそうなれたらいいけど」「そうは言っても、なかなかそのレベルに至るのは難しいのでは・・・」「じゃあ、一体どうしたらいいんだ?」と疑問を抱いてしまうでしょう。
そのためのやり方は、色々あります。
言い換えると、正解はあってないに等しいようなもの。
子供の勉強に例えて考えてみましょう。
「この勉強法でテストの点数がアップしました!」という子もいれば、「そのやり方ではなかなか点数は上がらなかったが、こう変えることで、時間はかかったが偏差値が上がった」という子もいます。
つまり、さまざまな方法を試す。試行錯誤することでしか、組織は変わらないからです。
まずは、組織風土をチェック
ですからここでご提案したいのは、まずは自社の現状把握をおこなうこと。
ここでは、「組織風土」にフォーカスを当て、組織の状態を推し量る「4つの空気」を見てみます。
組織の空気は、大きく以下に4つに分類することができます。
1)やらされ感
2)やるべき
3)創意工夫
4)逆算考動(ぎゃくさんこうどう)
この4つです。
1)やらされ感
私共が現場に入り込んだコンサルティング形式で指導をする時は、多くの場合、この段階から始まります。
「社員が『やらされ感』を覚えながら仕事をしても、意味がないのでは・・・」
中には、そうおっしゃる社長やマネジャーもいますが、一言でいうと“甘すぎ”です。
ビジネスパーソンとして、毎月、会社から給与をもらっているのです。それを『やらされ感』なんて言ってたら、まともに給料すら貰えなくなってしまいます。
やるべきことは、キッチリやる。
仕事の目的やゴール・果たすべき役割を論理的に伝えた上でそれでもやらない人がいるなら、ただ単に、やらないことがあたりまえになっているだけ。
ですから、その認識を改めさせ、「やることがあたりまえ」と思考パターンを書き換えるために、まずはやってみることから始めます。
2)やるべき
そうして「やらせる」ことを進めるうちに、組織の空気は徐々に良くなってきます。
どう良くなるのか。
それは、「これまでやってこなかったけど、今回取り組んで、分かった。やっぱりこういうことをやるべきだよね」という組織風土が醸成されるのです。
これはある種、当然のこと。なぜなら、過去できなかったことができるようになった時に、人は成長を感じ、喜びを覚えるからです。
挑戦する
↓
成功する
↓
成功したいから、また挑戦する
↓
成功を繰り返す
・
・
・
こうして“成功体験”が積み重なることによって、さらにその経験を得たいと思うから、「やっぱりやるべきだよね」と、挑戦できるようになります。
3)創意工夫
ここまできたとき、落とし穴となるのは成功体験。
なぜなら、百発百中・ノーミス・成約率100%は、絶対にありえないから。
つまり、挑戦しても、成功しないことが起こり得ます。
しかし、このフェーズに至るまでに創意工夫する空気が作られていますから、
▼どうすれば成功するか?
▼どうすれば達成できるか?
と、試行錯誤することがあたりまえにできる組織風土になっているといえます。
4)逆算考動(ぎゃくさんこうどう)
3)の創意工夫まで至ったら充分じゃないか! と思う方もいるかもしれません。
ですが、目標から逆算して、考えて、動く。この「逆算」があたりまえに身に付いていないと、どうなるのでしょうか。
創意工夫する習慣があって、組織の空気は悪くない。
でも、市場環境が変化すると、成果が出ない。目標達成しない。なんてことになりかねないのです。
本当の本当に、組織改革したいか?
現在、組織風土がどんな状態か。あるいは、どのような状態を目指したいか。
実情をいうと、それは、トップの考えに影響を受けます。
なぜなら、中には「いいから、オレの言うことだけ聞いとけ」「指示されたとおり動け。それ以外のことはやるな」といったスタンスの経営者も、割合は少ないですが存在するからです。
しかし、大半の経営者やマネジャーは、4)逆算考動まで出来るようになってほしい。そう願っています。
その理由として、逆算考動ができるようになれば、いつ・どんな時代でも生き残ることができる、強い組織になれると理解しているからです。
組織風土のために、まずは「やらされ感」
今回ご紹介した、4つの空気。
1)やらされ感
2)やるべき
3)創意工夫
4)逆算考動(ぎゃくさんこうどう)
これは、当然ながら順番どおりには進みません。
1)やらされ感→2)やるべき→その次は、また、1)やらされ感・・・と、行ったり来たりするものです。
それはある種、あたり前のこと。というのも、さまざまな価値観をもった、個が集まる『組織改革』をおこなっていくのです。
マニュアルなんてあってないようなもの。生身の人間を動かしていくのですから、簡単に・てっとり早くうまくいく魔法のような方法は、世の中に存在しません。
だからこそ、重要になってくるのは「手順」。順番を誤ると、本来うまくいくものもうまくいかないと言えます。
ですから、まずは「やらされ感」でいいのです。すべての土台として、まずは実行することから始める。なぜなら、やってみてはじめて分かることがあるからです。
例えば、ゴルフのスコアを縮めるために、いくらゴルフ番組を見ていても雑誌を隅々読んでも、上達はしないことでしょう。
それより先にすべきは、「まずは、打ちっぱなしに行こうか」「体力をつけるために、ランニングしようか」
と、体験から始めなければなりません。
【理解=言葉×体験】。
どれほど言葉を重ね、説明を繰り返しても体験がゼロである以上、部下が理解することはあり得ないのです。
組織改革のためには、組織風土と財務の健全化、そのどちらもが必要。
そのうち、組織風土の状態を推し量るための「4つの空気」をご紹介しました。
1)やらされ感
2)やるべき
3)創意工夫
4)逆算考動(ぎゃくさんこうどう)
自社は今、どれに当てはまるのか?
また、今後どの状態を目指していきたいのか。
それらを考えるために、ぜひこの「組織風土の4つの空気」を参考にしてみてくださいね。
参考:組織改革資料「営業組織を変える4ステップ」(PDF)のダウンロードはこちら(無料)