採用&営業コンサルタントの酒井です。
「2万人」
突然ですが、この人数、何の人数かお分かりになりますでしょうか?
最近、日本経済新聞でも記事になっていた、人材採用に関連する数字です。
これを読んでいらっしゃる方が経営者もしくは人材採用、特に新卒採用に関わる方であれば、知っておくべき数字の一つです。
もったいぶるのは時間の浪費ですので、ササッとお伝えしてしまうと、「2万人」この数字は、1月1日時点で内定を得ている大学生の総数です。
「えっ?卒業まであと3ヶ月くらいなのに2万人しか内定が決まっていないなんて、そんなわけないだろ!」そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
はい、おっしゃるとおりです。
卒業を3ヶ月後に控えた大学生(現大学4年生や修士1年生)のうち内定が決まっている学生は約39万人います。
「じゃあ、2万人って?」
来年入社の学生の採用がすでに決まっている?!
これは来年(2020年)卒の学生(大学3年生・大学院修士課程1年生)の内定者の数です。
「えっ?だって新卒の採用って、3月から広報活動開始だったよね?どういうこと?」
そうですよね、現行の「経団連ルール」で広報活動が解禁されるのは3月から。
そして面接が解禁されるのは4年生の6月。
にも関わらず、その1年半前に内定を得ている学生が2万人近くいる。
これは、就職情報大手のディスコが2019年1月16日に公表した調査結果に基づく推計です。
ディスコによると、2020年卒の内定率は1月1日時点で4.7%と前年同期の3.1%からアップ。学生の就活の早期化が進んでいることを表しています。
※参考:キャリタス就活2020 学生モニター調査結果(2019年1月調査)
同調査で内定率のほかにも、就活の早期化が進んでいることを表すデータは以下の通りです。
■インターンシップ参加者は全体の89.2%。1日以内の短期プログラムへの参加が増加
■インターンシップ参加後に企業からアプローチを受けた学生は6割以上に上る(86.0%)
■1月1日時点で「本選考を受けた」のは29.3%。受験社数は平均2.4社
全体的に各指標のポイントが増え、準備のタイミングが早期化していることが分かります。
インターンシップは、本来は学生に就業体験の機会を提供する制度。
私は前職で、インターンシッププログラムの企画設計や運営に長く携わってきた経験がありますので実感していますが、現実は優秀な人材確保や適性判断につなげるため、インターンシップを導入するケースがほとんどです。
インターンシップは、学生にとっても「就職活動の場」となっています。
採用マーケットの特徴を知ろう!
私は、企業の現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタントです。
採用に関するコンサルティングはもちろん、営業のコンサルティングもしています。
最近、多くの書籍やネットの記事で、「採用=営業」と言われるようになってきました。
しかし、私は営業のコンサルタントだからこそ、はっきりと言います。
「採用」は「営業」以上に厳しい。
「ちゃんとやっているか」「やっていないか」で、勝ち負けがはっきりするものです。
なぜなら、それは限られたパイの奪い合いだからです。
■全国の民間企業の求人総数が前年の75.5万人から81.4万人へと5.8万人増加
■一方、学生の民間企業就職希望者数は、前年42.3万人とほぼ同水準の43.2万人
■つまり、求人に対して、38.1万人の人材不足
■とくに、300人未満企業(中小企業)の大卒求人倍率は9.91倍(前年の6.45倍から+3.46ポイント上昇で過去最高)
これは、今春2019年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の採用市場に関するデータです。
※参考:リクルートワークス研究所 大卒求人倍率調査(2019年卒)
この事実を真正面から捉え、今何をなすべきかを考えるべきです。
でも、安心してください。ほとんどの会社はちゃんとやっていませんから。
ちゃんとやれば勝てる。これが採用マーケットです。
新卒採用において「今すぐ」やるべき6つのこと
「ちゃんとやっているかどうか」の基準は、ズバリ、過去を振り返って新しい取り組みを始めているかどうか。
上述のとおり、採用環境は年々変化しています。だからこそ常にこのような変化にアンテナを張り、対応を変化し続ける姿勢が必要です。
少なくとも、今までと同じやり方を続けている限り、うまくいかないのは必然だと思ったほうがいいでしょう。
年々限られたパイの奪い合いは厳しくなっているわけですから、ちゃんとやらないとダメなのは明らかです。
さて、一般的にちょうど2月と言えば、新卒採用を実施する企業にとっては3月からの広報活動解禁に合わせ、準備を急ピッチで進めている時期でしょう。
就活の早期化への対応は別とし、一般的に、新卒採用活動は大きく分けて、次のようなスケジュールで進んでいきます。
1.合同企業説明会出展・就職情報サイト掲載
2.個別企業説明会開催
3.選考(書類、筆記試験、適性検査、面接)
4.内定通知
5.内定者フォロー
一般的には、広報活動が解禁される3月より、上記1がスタートします。
つまり、大学や就職支援会社が主催する合同企業説明会への出展、就職情報サイトへの掲載を通じ、学生との接触がスタートするということです。
では、3月からの広報活動解禁前の今、ちゃんと準備はできていますでしょうか?
今回、準備できているかどうかをセルフチェックしていただこうと、6つの設問をご用意しました。まずは「はい」か「いいえ」で答えてみてください。
採用 事前準備セルフチェック
(1)採用する【目標人数】と【期限】を定めている
(2)採用目標人数と期限から逆算した中間成果指標(KGI)を定めている
(3)採用基準(採用する人材の基準)を定めている
(4)なぜその採用基準なのか、その【論拠】を定めている
(5)採用する人材がいる【場所】がどこなのかを漏れなく定めている
(6)採用する人材がいる【場所】に対する行動計画を定めている
さて、いかがでしたでしょうか?
「はい」の数は何個あったでしょうか?
ポイントは、「予め定める」ということ。
すべての設問の述語が「定めている」としたのは偶然ではありません。
採用活動の考え方は予材管理とまったく同じです。
予材管理の「予材」とは、「予定営業材料状態」の略であることからも分かるように、予材管理とは、「営業側が予め定めた営業材料の状態を管理」するマネジメント手法です。
採用活動においては、少なくとも現時点で上記6つのことを予め定めることが必要です。
行き当たりばったりで、いい人材に出会い、結果的に必要な人材を必要なだけ採用できるということは残念ながらありえません。
では、順番にご説明していきましょう。
1.採用する【目標人数】と【期限】を定めている
まずは採用する目標人数の設定です。
採用人数を設定していても意外とやっていないことがあります。
それは、いつまでに採用人数を達成させるかが曖昧になっているケースです。
目標には必ず期限がセットです。来年3月までなのか、今年9月までなのかによって、逆算してやるべきこと、戦術は変わってきます。
ですから、まずは【採用目標人数】と【期限】を明確に設定しましょう。
2.採用目標人数と期限から逆算した中間成果指標(KGI)を定めている
次は、(1)で決めた採用目標人数と期限から逆算した中間成果指標(KGI)を定めることです。
これは、営業の目標達成のためによく用いられるプロセス管理の一つ「パイプライン管理」です。
「パイプライン管理」とは、そのプロセスをパイプライン(管路)にたとえ、入口から出口までを見える化し、分析する管理手法です。
営業活動であれば、「初回訪問」から「受注」までの流れを管理するのが一般的です。採用活動であれば「初回接点」から「入社」までの流れを管理するといいでしょう。
たとえば、
「採用目標人数が10人だとしたら、20人には内定通知は出す必要があるな」
「内定通知が20人なら、最終選考には30人は必要だな」
「最終選考を30人やるには、一次選考には60人は必要だな」
「一次選考を60人やるには、会社説明会には100人来てもらわないといけないな」
「会社説明会に100人来てもらうには、・・・・・」
と逆算して、設定していきます。
ここで設定するポイントはいくつかあります。
ただ長くなってしまいますので最も大切な1つをお伝えすると、昨年の採用実績よりコンバージョン率が低くなる想定で設定すること。
たとえば、10人採用目標に対して、昨年の内定通知が20人だったとしたら、今年は25人と大目に見積もり設定することをおすすめします。
当然、コンバージョン率を上げる施策も大切ですが、目標達成が絶対だとしたら設定に余裕を持たせることも必要です。
3.採用基準(採用する人材の基準)を定めている
自社に採用したい人材はどういった基準を満たしていなければならないのか、その基準を定めることです。
採用基準を設定する切り口は2つあります。
1つ目は、現在活躍している社員の特性を言語化する
2つ目は、経営目標や今後の事業展開を見据えて、現在不足している社員の特性を言語化する
この2つです。
2つの切り口は、主観が入り込む現場からの聞き取りではなく客観的に設定すると良いでしょう。
経営と採用責任者との間で基準を明確にするのはもちろんですが、どうしても主観的になってしまいますので、客観的な視点として採用支援会社や私のようなコンサルタントを活用することもおすすめします。
4.なぜその採用基準なのか、その【論拠】を定めている
これは、その採用基準を設定した「論拠」を言語化しておくということです。
たとえば、「情報処理能力が高い」というのを採用基準として設定したとします。
では「この採用基準を設定したのはなぜか?」と問われたときに、採用に関わる人たちが皆、ぱっと答えられるどうか。
「だって、そうでしょ」ではダメなのです。
なぜなら、複数の人が採用に関わる場合、対象者の主観的な良し悪しの判断によって採用活動を左右かねないからです。
判断の拠り所として、「採用基準」にはセットで「論拠」を言語化し共有することで、誰が面接官になったとしても一定の基準で判断できるようになります。
5.採用する人材がいる【場所】がどこなのかを漏れなく定めている
次は、採用基準を満たした人材にリーチを掛ける「行き先」を定めるということです。
採用活動の場合、採用したい人材がどこにいるのかを特定することが重要です。
直接、学生一人ひとりにしらみ潰しに声をかけるわけにはいきませんから、特定の基準に合致した学生を多く保有している場所はどこだろうかと考えましょう。
たとえば、採用基準が「情報処理能力が高い人」だった場合には、その基準をクリアした人材がたくさんいる場所はどこだろうと、その条件を設定します。
「1学年300人以上の学生が在籍する情報系学部」というように条件設定ができれば、抜け漏れなく行くべき先がリストアップできます。
6.採用する人材がある【場所】に対する行動計画を定めている
(5)でリストアップされた「行くべき先」へのアプローチを計画していきます。
その際、ポテンシャルのある場所ほど頻度を多く計画を立てることが大切です。(どのようにアプローチするべきかについては、次回の予材管理ブログでご紹介したいと思います。お楽しみに!)
採用は取り合いであり、勝つか負けるか
以上の取り組みのなかで、ちゃんとやれていない項目がありましたら、今からでも遅くありませんので取り入れてみてください。
ただし、すべてをやらなければならないというわけではありません。
重要なことは、採用活動の「あたりまえの基準」の高い企業にしか、今後いい人材を迎え入れられなくなっているということです。この現実は正しく捉えるべきでしょう。
もはや、今までのやり方を変えない限り、求める人材は目の前にやって来てくれません。
この記事を最後まで読んでいただいた方は、いくら厳しい採用市場であっても勝てる可能性が高いと私は思います。2020年の新卒採用に向け、頑張ってください。