コンサルタントの岩山です。
私は、年間1,000名の経営者・営業マネジャー、現場の営業担当者とお会いします。
お客様、とりわけ経営者の皆さまからお伺いする課題は、多岐にわたります。
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- 若手社員がなかなか育たない
- せっかく教えたと思ったら、辞めてしまう
- モチベーションが上がらない
- 組織の空気が良いとは言い難い
- 決めたことをあたり前にやり切れない
- 商品・サービスに優位性がない
- 競合他社の台頭により、価格競争に巻き込まれることが増えた
- 社内の情報共有ができていない
- 目標が達成できない
・・・など。
では、経営者や営業幹部の皆さまが上記のような悩みを抱えるのはいつだと思いますか。
意外にも「目標を達成している時」なのです。
なぜなら、現状を見ると目標を達成しているため、現場はさほど危機感がなく、これまでのやり方を繰り返そうとするからです。
ここで一つ、大きな落とし穴が。
それは、目標達成の要因が外部環境にある場合です。
今、景気がいい。追い風が吹いている。だから、結果的に目標を達成してしまっている。しかし今、目標達成できているのは外部環境が上向きなために、たまたま上手くいっているだけです。そこに再現性はありません。
裏を返せば、いつ目標が達成しなくなってもおかしくない状態と言えます。
ですから、未来を見据える人は懸念するのです。
「目標を達成している今は、いいだろう。しかし、3年後や5年後、さらにその先において、当社は生き残っていけるのだろうか―」と。
会社の未来を「中期経営計画」で描く
単年度の売上・利益目標のみを追いかけるのではなく、3年~5年、もっと先の中長期的な目標達成に向けた計画を、「中期経営計画」でもって策定する企業が増えつつあります。
※ご参考:中期経営計画の作り方~社員を動かし売上目標を達成させる経営計画とは?
一方で、時間と労力をかけて作った中期経営計画が、計画倒れしている会社も少なくありません。
では、中期経営計画を達成させるために、私たちはどのように進めていくべきなのでしょうか?
中期経営計画の4つの要素
1.経営計画
中期経営計画において掲げた「経営目標」。
2.役割
経営目標を達成するための「役割」。
営業なら、まずは「目標を達成させる」ことが役割にあたるでしょう。
他にも、製造部門、生産部門、品質管理部門、商品開発部門、経営企画部門、管理部門など、各セクションに応じて役割が与えられています。
3.成果
それぞれの役割に対し、会社から求められる「成果」があります。
営業の場合、果たすべき役割が「目標を達成させる」こと。したがって、出すべき成果は「予算」になります。
4.行動
では、成果である予算を導くための「行動」とは何なのか。
具体的な方針や施策が会社から示されていることもあります。しかし、「このアクションだけだと、予算には届かない・・・」というのなら、自分の頭で考える。あるいは上司・先輩に相談する。
そうしたすべてを含め、「行動」とします。
ここでご紹介した「経営目標」「役割」「成果」「行動」の4つは、密接につながっている必要があります。それぞれが独立しているようでは、機能しません。
営業の現場で見受けられるのは、『会社で定められた行動指標やKPIをやっているからいいでしょ』と、「行動」のみにフォーカスしているケース。これでは、経営目標の達成が目的ではなく、行動することが目的になっています。
「決められた行動さえやっていれば、目標が達成していようがいまいが関係ない」と、誤った方向に走ってしまう恐れがあります。そのスタンスでは、経営目標や中期経営計画の安定的な達成は実現できません。
なぜ、中期経営計画どおりにいかないのか?
この4つのうち、営業現場でもっとも迷いが生じるのは、「行動」です。
なぜなら、その他の「経営目標」「役割」「成果」は、そう大きく変わることはありません。
しかし、「行動」については、目標達成から逆算しながらPDCAを回さなければならない。言い換えると、営業は、行動を常に変え続けていく必要があります。
それは、お客様が人だから。相手が人間である以上、物理学のように「これくらいの力を加えれば、物体が何cm動く」といった絶対的な法則は存在しません。
つまり、営業とは、不確実性が非常に高いといえます。
「この営業トークさえマスターすれば、成約率100%!」なんてことはない。あの時、上手くいったトークを別のお客様で試してみたが、うまくいかなかった。あるいは、前回の失敗を踏まえて、次はこの点に気をつけてやってみよう。そうした思考錯誤を繰り返すしかないのです。
では、そうした不確実性の高い状況の中、私たちはどのようにして「行動」を変え、PDCAサイクルを回し、中期経営計画を達成させていけばいいのでしょうか。
中期経営計画を達成させるための「予材管理」とは?
中期経営計画の達成から逆算し、それを仕組みでもって進めていくのが「予材管理」です。
予材とは、営業の予定材料を略したもの。未来の売上になるであろう営業の材料です。予め仕込むので「予材」と言います。
そして予材管理とは、この予材をマネジメントして営業活動を行うことで、「最低でも目標を達成」するマネジメント手法です。
外部環境の変化が激しくとも、どんなに悪くても目標を達成させる。そのために、予め積み上げておいた2倍の予材がリスクヘッジとなり、外部環境の変化に左右されることのない安定的な目標達成を実現します。
しかし、「2倍の予材を積み上げてごらん」といきなり営業の現場に落とし込んでも、そうそう上手くいきません。なぜなら、多くの場合、「2倍なんてとてもムリ」「どこにそんな予材があるんだ?」といった現場からの反発が出てくるからです。
営業の現場に落とし込んで予材を積ませようとしても、目標の2倍には達しないことが分かった。ならば、「じゃあ次、どうするの?」です。
つまり、ネクストアクションとして足りない分をどのように埋めていくのか?を考えて行動に移す。この行動がまさに、出すべき成果(=予算)を導くための「行動」にあたります。
もちろん、行動に移したからといって、そのすべてが実際のビジネスやお仕事につながるわけではありません。ましてや、何らかの行動をしてすぐに成約に至るなんてほぼあり得ません。すぐに話が進まないケースの方が圧倒的に多いでしょう。
営業活動のPDCAで中期経営計画を達成できる状態にする
お客様は人です。
営業担当者の訪問であっても、いくらツールに頼ったとしても、最後に「買います」と意思決定し、財布を開けるのは、お客様。これは、個人の財布でも会社の財布でも同じです。
お客様に首を縦に振っていただく。そのために営業は、試行錯誤し、工夫と改善を繰り返すしかないのです。
しかし、会社からは抽象的な方針のみ示され、あとはほとんど白紙の状態で「どうしたらいいか、自分で考えてみて」とマネジャーから言われても、営業マンは途方に暮れてしまいます。ですから、行動に迷いが生じるのです。
予材管理では、「目標の2倍の予材を積み上げる」というルールがあります。ですから不足分を埋めようと考え、行動します。もし営業担当者だけで考えても2倍に達しないのなら、上司や先輩に相談する。
これを組織全体であたりまえにおこなえるようになってはじめて、経営目標を達成し得る状態、中期経営計画の達成に向けて走り出せる状態になります。
会社の未来をみすえた、中期経営計画。それは、組織にとっての道しるべといえます。結果的に途中で寄り道をしたとしても、計画を立てた以上はその方向に向かって進めていきたいですよね。
そのために、営業が取るべき「行動」を明確にしていく。そのための仕組みとして予材管理があります。
こうした予材管理という仕組みを使って、あなたの会社で立てた中期経営計画を、ぜひ達成していただきたいと思います。