コンサルタントの桑原です。
「戦略なき営業マネジャー」、最近多くのメディアで取り上げられるネタでもあり、経営者の皆さんからお伺いする代表的なお悩みのひとつです。
戦略と戦術、この違いを解説するものは多数ありますが、多くの現場に入って私自身がこのように解釈しています。
- 戦略…勝つための状況、そのものをつくり上げるために必要なこと
- 戦術…与えられた状況、その中で勝つために必要なこと
このように定義して考えると、営業マネジャーと呼ばれる方の大半は「戦略なき状態」で目の前の仕事に執着している現実を目の当たりにします。
「そんなこと言われても、目の前の仕事の対応で手一杯の状況なのですよ!」
「先のことを考えて動けって?では、今のことはやらなくて良いのですね!」
「時間がないのですよ、ただでさえ時間外労働も許されないのに!」
現場に入ったらほぼ確実に罵声に近い形で私が頂戴する言葉です。
これらの温かい言葉に対して決まって私が返すお言葉があります。
「今のことも、先のことも、全部やる。かつ時間内にね」
最初にこのお言葉を投げかけさせていただくと、大概マネジャーの皆さんは烈火のごとくお怒りになり、
「社長、あのコンサルタントはわかっていません!現場のこと何にも知らずに」
「こんな取り組み、すぐに辞めましょう!今までのやり方を自分たちなりに改善して…」
このような台詞とともに社長室になだれ込む、ご指導にお伺いして最初に必ず見る光景です。
さて、皆さんはどう思われましたか。
営業の仕事は目標を達成させること
営業の仕事は目標達成以外にありません。
何をどれだけ、一生懸命、心を込めてやろうが、目標達成しなければならないのです。
「今のことも、先のことも」どちらか一方で済むのであれば良いのです、それが許されるのであれば。
皆さんの会社はいかがでしょう。
A社「(某大手メーカー)ウチはなくてはならないポジションを確立しているのです。目標達成にむけてどころか、むしろ切る仕事を決めるのが営業会議ですよ」
B社「ウチは通販で他に真似できない仕組みを確立しています。おたく(私)の言う組織営業力強化は課題ではないですね」
A社もB社も3~4年前まで飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
このような状況にいたること自体は素晴らしいことです。ご本人も含めた先達の努力の賜物でしょう。
しかし今、この両社は「今までの」やり方では目標達成しなくなったばかりか、「先のこと」も見通せず、さらに残業すら減らすことができず、改めてご相談に乗らせていただくことになりました。
「今のことも、先のことも、全部やる。かつ時間内にね」
環境変化に抗い、最低でも目標達成し続けるためには、今与えられた状況でできることではなく、先にむけて勝ち続けるための「状況」そのものをつくり上げる「戦略」が必要なのです。
目標達成させる組織に変える3つの戦略
目標達成させる組織をつくり上げるにあたって、私は3つの戦略を構築することをお勧めしています。
1. 経営戦略
経営戦略は企業の「あり方」を実現させるための戦略で、最終的な目的や目標、判断の基準や制約要件を言語化し、多くの場合は「中長期経営計画」や「方針書」などの形でまとめます。
「あるべき姿」を具体化した組織運営には不可欠なもの。
であるにもかかわらず、多くの企業で形骸化しやすいのは何故なのでしょう。
私は、以下の3つが主な原因となっていると考えています。
1) 抽象的すぎて下位の戦略とつながっていない
2) 一人称になっておらず当事者意識がもてない
3) 検証どころか振り返りもせず、つかってすらない
「中計でもつくるか~」という感覚で取り組まれる方はいらっしゃらないとは思いますが、結果として形骸化されておられる場合は、是非参考にしてみてください。
当社では「予材管理方針書コース」で、このあたりを踏まえた戦略として機能する方針書、について学んでいただくようにしています。
→ 戦略を組織に落とし込む「予材管理方針書コース」はこちら
2. 営業戦略
さて、ここからが営業マネジャーの領分です。
先ほども述べましたが勝つための状況、つまり目標達成する状況をつくり上げるために「先」と「今」必要なことを具体化しなければなりません。
そのために用いるのが「戦略予材管理表(シート)」です。
通常単年度(マネジメントサイクルによりますが)で目標から逆算して3つの予材を積み上げて作成する「予材管理表(シート)」ですが、営業戦略を策定するにあたっては3年~5年の期間で作成します。
まず想定されるリスクを十分に汲み取ったうえで見込みを積み上げることから始めます。
その際に一切の感情を差しはさむことなく、事実のみにもとづいて判断することが大切です。
思い込みを排して見込みを積み上げていけば3年先、5年先になるほど、見込み数値は減少していくはずです。
もし、この段階で見込みが上がっていくようなものしか描けないようであれば、その営業マネジャーは見通しが甘すぎですね。
上振れする分には問題ないのです、最大限のリスクをヘッジしてクールに書き上げなければなりません。
反面白地は既存のお客様の拡大余地を模索しながらも、基本的には楽観的に描く必要があります。
ただし、先々の白地とはいえ予材なのですから「絶対にここまでには見込みにする」という前提認識は忘れてはいけません。
減りゆく見込みの中で「どこを守らなければならないのか」、
あきらかに不足する収益を確保するために「どこを攻めなければならないのか」、
戦略予材管理というフレームを用いることで、
- どこで
- なにを
- いくら
- いつまでに
- どのような切り口で
- どのようなシナリオで
「今」と「先」に必要なことが全て明らかになります。
そのうえで予材の状態にあわせ、部下に「予材」と「KPI(活動)」、それに割く時間とをセットで落とし込み、既存新規かかわらず戦略的に狙うべき先として営業マネジャーが主体となってモニタリングしていきます。
3. 顧客戦略
いくら営業戦略が戦略予材として具体化されても、それが実現し得る状況(お客様と自社との)をつくり上げねば始まりません。
「予材配線図」と「KPIカウントシート」を用いて、お客様の誰と自社の誰がどうつながるのか戦略を描き、実行促進。
その結果得られた状況変化を営業マネジャーは先ほどの「戦略予材管理表(シート)」で検証していくのです。
ビジネスで「勝つ」とは生き残ること
「今」と「先」、目標達成する状況そのものからつくり上げる「戦略を持った営業マネジャー」のあり方、そしてやり方のサマリーについてお話させていただきました。
勝つ、という言葉の定義は様々です。
当社代表横山の言葉を借りれば、勝つとは最後まで立っている、つまり生き残ること。
生き残れない状況にもかかわらず、今の状況を嘆くばかりで目先の仕事に逃げ込む「戦略なき営業マネジャー」に目標達成を任せるには、あまりに厳しい市場環境なのではないでしょうか。
→ 桑原が関わったコンサルティング事例はこちら