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営業戦略の立て方とアプローチ法~営業組織が迷わず取り組む戦略とは

コンサルタントの桑原です。

2019年4月30日をもって平成が終わり、翌5月1日より新元号「令和」の時代がはじまりました。

毎年この時期は方針発表会など、組織の方向性を示す場に同席させていただく機会が多くあるのですが、新時代を迎えることと重なり、今年は例年にまして営業戦略の確実な実行を営業組織に求める場面が多かったように感じます。

 

営業組織が戦略を実行しない

期首にあたって華々しく発表される中期経営計画などに基づいた営業戦略。

しかし多くの営業組織で示された営業戦略に沿って動きが劇的に変わる、ということはありません。

方針発表会でも盛り上がったのは気分だけ、翌日からはいつもと変わらない営業活動が再開される。方針発表会とはそういうもの、示された営業戦略に沿って拾い上げる指標の切り口が変わるだけ……という会社も少なくありません。

果たしてそれで本当に良いのでしょうか。


 

営業戦略の目的

以前のブログ「戦略なき営業マネジャーに目標達成を任せるのか」で、戦略と戦術の違いについてご紹介させていただきました。

戦略…勝つための状況、それそのものをつくり上げるために必要なこと
戦術…与えられた状況、その中で勝つために必要なこと

営業戦略とは本来、新たな時代、新たな期、劇的に変化する市場環境に対応し勝つための状況をつくり上げるために必要な取り組みを具体化したものです。

戦略的に求める成果が変わるのであれば、当然それを得るための営業組織のアプローチも変わるはずです。

今まで通りの活動で活動状況を把握するための切り口を変えただけでは、営業組織から「管理者側の自己満足、発表会のための営業戦略」と受け取られても仕方ありません。

発せられた営業戦略が組織の具体的な行動の変化を求めず、成果のみ変化を求めたものであるのだとしたら、その戦略はすでに破綻していると言えるのでないでしょうか。

 

営業戦略におけるアプローチ~営業組織を動かす3つのポイント

「いやいや、ウチの営業戦略はターゲットとする顧客も拡販すべきサービスも明記しています!」という方も当然いらっしゃると思います。

「でも実行されない。やっぱり営業組織の側に問題が……」と考える前に、営業戦略について3つのポイントを押さえているか、一度、確認してみませんか。

 

ポイント1.足元の数字(見込み)の推移を明確に示しているか

営業現場に立つ人間は日々、お客様や市場という戦場で競合他社や客先の反対勢力と戦い、「今」の売上を構築することに必死です。

いくら社長や役員が未来、つまり「先」の危機を叫んだところで彼らの危機意識は今日、今月の「今」にあります。

その彼らに具体的な行動の変化を求めるには、漠然とした「先」のイメージではなく、この顧客、この商材サービスが期末、来期、再来期、いついくらになると考えているのか、つまり対象と時期、そして金額がどのようになると考えているのか、具体的に指し示す必要があります。

営業戦略には、過去からの推移だけでなく、考え得るマイナス要因すべてを盛り込み、来るべき恐怖の未来を数字で示しましょう。

もちろん想定が外れ、マイナス要因が思ったより実績に影響を与えないことも多々あります。生産計画であればいざ知らず、営業の活動計画を定めるにあたって現状を悲観的に見ることに何のデメリットもありません。

 

ポイント2.新たに構築する数字(白地)の論拠を明確に示しているか

足元の数字(見込み)では立ち行かないことに真正面から向き合い、現実を受け入れることではじめて、新たな取り組みに対する心理抵抗を和らげることができます。

あくまで和らげるだけ、いくらそれを認識させたところで「先のことを考えてもしょうがない、今を頑張るだけだ!」という、行き当たりばったりの前向きさを持つのも営業組織です。

間違った開き直りをさせてしまう前に、明るい未来を示す必要があります。

この顧客、このサービスは期末、来期、再来期、いついくらになる、と未来を断定して指し示すのです。

このときは先ほどの足元の数字の場合と真逆の発想が必要です。
過去の推移はお構いなし、考え得るプラス要因をすべて盛り込み、それらを論拠としてバラ色の未来を数字で示します。

バラ色の未来を信じさせるためには、論理よりも感情、精度よりも量が重要です。そもそも無いものを生むのです。あきらめずに組織一丸となって追うためには、営業戦略に未来の数字を楽観的かつ詳細に描く必要があります。

 

ポイント3.それぞれにかけるべき行動リソース(労力・時間)を明確に示しているか

ポイント2で示した営業戦略を実現するための具体的なやり方は、顧客も商材サービスも、そして実行する営業担当も様々である以上、取り組みの詳細な部分まで戦略の段階で定めるべきではありません。

むしろ、詳細な行動を定めてしまうことで、本来の目的である数字成果ではなく、手段であるはずの行動に焦点がいってしまう可能性が高くなります。

営業戦略においては、

・顧客や商材サービス、それぞれのカテゴリにおける取り組み優先順位
・足元の数字と新たに構築する数字にかける時間配分

など、行動のリソース配分を示すことが望ましいでしょう。

「このカテゴリの顧客には必ず月何回訪問、こちらは発生的な対応のみ」「新規開拓は各拠点、1日2時間で」など、組織として何にどれだけ労力・時間を投入するかまで、営業戦略で明示し、それらが実施されているかを戦略的な取り組みとして確認していきます。


 

営業戦略をやり切らせるマネジャーと営業組織の基礎習慣

ここまで営業組織を迷わせず、確実に実行に移させるための営業戦略についてお話させていただきました。

しかし、ここまでしても営業戦略を実行しない組織もあります。

そもそも「目標達成するつもりがない」「やり切る習慣がない」「上手くいかなくても、上司と相談しない」組織。

つまり、あたり前のことをあたり前にできない営業組織のことです。

いかなる営業戦略も、受け取る組織のあたり前の基準が低ければ、機能しません。

ですから私どもは「壁マネジメント」メソッドなどで、営業組織のあたり前の基準を整えることからお勧めしています。(※参考:3つのルールでやり切る組織に変える「壁マネジメント」とは?

反面、コンサルタントして外部から拝見したとき、あたり前の基準は決して低くはないのに営業戦略が正しく機能していない組織も少なからずあります。

それが本項でご紹介させていただいたような営業戦略が組織の具体的な行動の変化を求めず、成果のみ変化を求めたものになっているケースです。

中期経営計画や営業戦略が計画倒れになっている……そう感じたときには、営業組織のあたり前の基準とあわせ、営業戦略を発する側のあり方についてもチェックしてみてくださいね。