当社が行った日本の営業実態調査2019で、私が注目したある質問があります。
その質問は営業マネジャーの皆さまにお伺いした「組織や部下に対して感じている問題は何か」というもの。
結果回答の3位は以下のようになりました。
1位 部下が自分で考えない・思考が浅い(26.6%)
2位 部下の成長が遅い(23.6%)
3位 部下のモチベーション・意欲が低い(21.5%)
(※複数回答可 出典:「日本の営業実態調査2019」)
私が注目したのは、1位の回答です。
確かに、「部下が自分で考えない、思考が浅い」という悩みは年間通じて、様々な営業マネジャーからお聞きする悩みです。そして必ずと言っていいほど、こう尋ねます。
「どうすれば、部下が自分で考えるようになりますかね?」
そんな質問に対し、私はいつもこう返させていただいています。
「当社の予材管理を導入していただければ、その問題は解消できますよ!」
部下が考えなくなる共通の要因
なぜ、私が自信を持って答えられるかというと、部下が自分で考えない、思考が浅いと悩みを抱える営業マネジャーの部下指導は、ほぼ間違いなく『ひとつの共通した要因』があることが分かっているからです。
その要因とは、従来型の営業管理手法である、案件管理を行っていることに起因します。
当社が営業コンサルティングのノウハウとして提供している予材管理と従来型の案件管理には決定的な違いがあります。
その違いとは目標達成に向けて部下がどのように考えて行動計画を立てているか、そしてどう考えたかを管理しているか、ということ。
案件管理、予材管理ともに、営業活動を管理することを目的とした手法ですが、管理する対象範囲が異なります。
案件管理で見える部下の営業活動の限界
案件管理では、年間目標に対して受注案件や商談中の案件を管理し、目標に対して現在どのくらいの足りないのかを把握し、対策を考えられるようにすることが目的の手法です。
例えば、3月末決算のある会社の営業パーソンAさんの年間売上目標金額が1億円だとします。
その会社では、案件管理をしていて半年経過した時点の状態を見たとき、以下のようになっていたとします。
受注案件:4,000万円(500万円×8案件)
商談案件:4,000万円(4,000万円×1案件)
目標差異:-6,000万円(目標1億円に対して実績とのギャップ)
案件管理で見える状態はここまでです。
営業マネジャーなら、当然、4,000万の大型案件が決まるかどうかが気になるはずです。
そして、決まったとしても2,000万円足りない状況が気になるはずです。
「4,000万円の案件の状況はどうなっているんだ?決まるんだろうな!」とマネジャーが部下に尋ねると、4,000万円の案件の進捗がどのような状況であっても、「大丈夫です。絶対に決めてきます(決めるつもりで頑張ります)」と答えるでしょう。
また、大型案件を受注できたとしても2,000万円足りないわけですから「引き続き営業して商談を増やしなさい」と指摘します。
そうすると部下は「はい!頑張ります」という答えるでしょう。
しかし、『大型案件を絶対に決めてきます』『足りない分に対して頑張ります』と勢いよく答えたとしても、部下がどのように考えて、目標を達成しようとしているかの考え方までは分かりません。
案件管理の場合、「後いくら足りないのか」と「足りない分に対するの商談・案件」がいくらあるかしかわかりません。
ブラックボックスを開いてみると……
2カ月後、マネジャーがAさんに、「4,000万円の案件はどうなった?ちゃんと進捗しているんだろうな」と聞くと Aさんが気まずそうに「実は、お客様側の方向性が変わって、案件そのものがなくなりました。申し訳ありません。私なりに最大限努力したのですが……」と言ったとします。
「だったら、残りの6,000万はどうするんだ?考えているんだろうな」
営業マネジャー問いに対して、Aさんは何も言えません。そうなると、マネジャーは次のような結論に至ります。
『なんで、自分で考えられないんだ?前から全く成長しない、そもそも達成する意欲がないのか?』
案件管理による部下指導の盲点
このような結果になるのは、Aさんだけが悪いわけではなく、またマネジャーだけが悪いわけでもありません。
案件管理はその管理の特性上、予算に対して足りない分と商談中の案件しか見えていないので、部下がどのように目標達成に向けて行動しているかが分かりません。
この運用に慣れてしまうと、積みあがっている案件しか見ないようになり、目標達成は部下任せになるケースが少なくありません。
【予材管理式】部下指導で「考える部下」が育つ
予材管理は案件管理では管理できない、「部下が目標達成に向けてどのように考えているか」を見える化して、その思考を管理します。
そのため、目標達成に必要な考え方と行動になるよう指導することができます。
予材管理は、
・受注案件=見込予材
・商談案件=仕掛予材
・仮説案件=白地予材
を同時に管理します。
この白地こそが、部下が「どのように目標を達成するつもりで考えて行動しているか」が表される部分です。
予材管理の運用ルールでは、強制的に見込+仕掛+白地を合計して、常に2倍の材料が積み上げて記載していなければなりません。
例えば、先ほどのAさんのケースであれば、半年の段階で目標1億円に対して
・受注案件=見込予材=4,000万円(500万円×8予材)
・商談案件=仕掛予材=4,000万円(4,000万円×1予材)
・仮説案件=白地予材=0万円(0万円×0予材)
と表している場合、そもそも2,000万円の不足を埋めるプランがないことが分かります。
また、4,000万円の仕掛予材が失注した場合にリスクヘッジするための考えが無いことが分かります。
このような状態でA君がいくら「大丈夫です。頑張ります」と訴えても、「この考え方は、そもそも目標達成するつもりで営業していない」と判断できます。
予材管理の基本ルール2倍の材料を積むことも守られていないので、「2倍の予材を積みなさい」と指摘します。
その結果、Aさんが下記のように、2倍の予材を表したとします。
・受注案件=見込予材=4,000万円(500万円×8予材)
・商談案件=仕掛予材=4,000万円(4,000万円×1予材)
・仮説案件=白地予材=12,000万円(4,000万円×3予材)
【予材合計2億円】
すると、目標未達をリスクヘッジするために、4,000万円の白地予材3つにに対して活動して、未達をリスクヘッジする予定で動いているA君の考え方を確認することができます。
この考え方が見えることで、マネジャーははじめて次のように指導できるようになります。
「4,000万規模の大型商材は、商談化してから受注までに最低でも半年はかかる。今、商談中の案件は決まるかもしれないが、現段階で、白地の4,000万の予材は全て、今期中に受注できる可能性が無い。
にも関わらず、大型商材だけで白地を書いているのは、2倍書かなければならないから適当に書いてあるだけで、目標を達成するつもりで考えていない。
商材で、半年以内に受注が可能なのは500万の商材だから、Aさんが担当するお客様で扱ってくれそうな会社を18社を選定して、白地に書いて行動しなさい。
そうすれば、現在商談中の4,000万円の案件がもし失注しても、今期の達成に向けた活動になる」
また当然、指導した後には指導した通り白地予材を記載して行動しているかをチェックする必要があります。
何故なら、指導しても部下が本当に指導した通りの考え方で行動しているかどうかが予材管理に現れるからです。
指導を理解していない部下、自分の考えで行動する部下は、予材管理シートに指導した内容を表せないか、記載しないか、行動しないので、指導したことに対して、考え方が変わっていない事が良くわかります。
指導しっぱなしで部下育成はできません
多くのマネジャーは指導した後、放置しているので、「部下が成長しない・考えない・意欲がない」と悩みます。部下の考え方を変化させ成長させるところまで関わっておらず、問題を「部下の意欲がないことが理由だと」考えます。
それは、部下育成を放棄していることになります。
何度も指導して、部下の考え方が目標達成に必要な考え方になるまで指導することで、どんな部下でも必ず成長していきます。
部下が自分で考えないことに悩む営業マネジャーは是非、案件管理を辞め、予材管理をスタートしてください。