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次世代の営業幹部が育たない! 何が足りないのか?

次世代の営業幹部が育たない! 何が足りないのか?

コンサルタントの横山です。

「横山さん、頼りになる営業部長が定年退職することになりました。しかし、次に営業組織を任せられる人がいません」

先日、ある社長から、このような相談を受けました。たしかに悩ましい問題です。

「課長は3人いますが、誰を選んだらいいのか……」

社長が困り果てているので、私はすぐにこう答えています。

「まず、次の営業幹部にはどのような要件が必要なのか。それを決めませんか」と。

なぜなら、ひとりひとりの課長を比べていても埒が明かないからです。それぞれ個人の特徴を見るのではなく、まず営業幹部に必要な要件とは何か。それをハッキリさせることです。

その要件を満たすのであれば、課長以外からの人選があってもいい。外部からの登用も選択肢に入れてもいいと私は考えています。

ますます求められる論理思考力

「そうは言われても、うまく言語化できないのですが」

社長にそう言われ、私は「あくまでもひとつのアイデアです」と断ったうえで、こう言いました。

「これからの時代は、ますます論理思考力が大事です」と。

マネジメントとは、組織目標を達成させるために、時間、人、お金、といったリソースを効果効率的に分配することを指します。

とくに働き方改革時代になり、時間や人のリソースを、うまくやりくりできないマネジャーでは、とても組織を任せられません。ですから、最低限の論理思考力が必要なのです。

論理思考力が高い人は何がいいかというと、「目の付け所」が異なります。「視座」や「視点」と言えばわかりやすいでしょうか。

柔らかに視点を移動させられるのです。具体的には、視点の高さ、視点の深さ、視点の長さを状況によって変えて状況判断することができるということです。

それでは、鳥の目、虫の目にたとえて解説していきましょう。

「鳥の目」は視点の高さ

まず、視点の高さを表現する「鳥の目」を解説していきましょう。

鳥の目とは、上空から全体像を見る目のことです。俯瞰力、大局観をつけるためには、不可欠な「目」と言えます。

誰かの長い議論を客観的に聞いているだけで、議論の全体像を頭に描くことができます。そして、何が話の論点なのかを見つけ出すことが瞬時にわかるのです。

また、全体像を描くために欠けている情報も発見できるので、効果的な質問や調査を繰り返すことができます。

とくに、組織トップには不可欠な目です。

枝葉の話にとらわれることなく、本質的な問題は何か、いま組織にとって最も大事なことは何かを思い返す役割を持っています。

「鳥の目」は、だいたいの目安でいい

鳥の目は、全体の外観をとらえること、おおざっぱな地図を頭に描くことに使います。全体像(鳥瞰図)をとらえることで、上空から俯瞰して眺めることができるようになり、問題の箇所に”あたり”をつけることができます。

現状の全体像を知りたいのであれば、「3C分析」「ファイブフォース分析」「SWOT分析」「企業のライフサイクル」「バリューチェーン」といったフレームワークを使って整理しましょう。

ビジネスモデルや戦略の全体像をおおざっぱにつかみたいのであれば、「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」「アンゾフの成長マトリクス」「ビジネスモデルキャンバス」等を使います。

営業の幹部であれば、これぐらいの古典的なフレームワークぐらい、使えるようにしたいですね。

「虫の目」は視点の深さ

全体像をつかみ、問題の”あたり”をつけたら、その場所へ急降下します。鳥の目を捨て、虫の目を使って細部に目を向けるのです。

たとえば全体像を確認したあと、「売上に繋がっていないイベント業務に、多額の広告費を使っている営業所が全国で3ヵ所ある」という問題が明らかになったとします。

しかし、問題を特定したあと、いきなり解決策を導き出してはいけません。

たとえば、「3営業所が使っている広告費を減らせ」と、このように……。

問題を特定したあとは、原因を特定するプロセスへと移行すべきです。

有名な「なぜなぜ分析」をしてみましょう。問題に対して「なぜ」を問いつづけることで、原因を明らかにするフレームワークです。

「なぜなぜ分析」を繰り返すことで、ある程度の真因がつかめたら、解決策を導き出すことは簡単です。

それでは、以下の問題に対して原因を特定していきましょう。

「なぜ、売上に繋がらないイベントに多額の広告費をかけたのか?」

「3営業所では、コスト意識が低い」

「3営業所では、ルールが徹底されていない」

「3営業所に配属されたのは新人マネジャーばかりで、現地のベテラン社員に強く指導できていない」

「営業所に配属される前に、新人マネジャーに対する研修が行われていない。個人任せとなっている」

ここまで明らかになれば、「新人マネジャー研修の実施」が解決策のひとつになります。「広告費を減らせ」と命令するだけで、正しい問題解決にはなりません。

行動に落とし込む

抽象的な表現を、具体化するときも虫の目を使います。

「新規開拓を積極的にやろう」「ルールを徹底させよう」というのはスローガンであり、正しいアクションプランではありません。「4W2H」「5W1H」などの切り口を使いながら、具体化させます。

「展示会に参加した50社に対して、フォロー電話を3日以内に終わらせよう」

「7つのマネジメントルールをスラスラ言えるようになるまで、毎日作業マニュアルを読み合わせしよう」

このように、数字を使って表現することが重要です。

また、プロジェクトをタスク分解するときにも虫の目が必要です。

たとえば「残業削減」「部下育成」などは、多くのタスクが集合したプロジェクトです。このプロジェクトの状態のままでは、物事が動き出さないため、細かい行動レベルに落とし込んだタスクに分解していくことが大事です。

事実と認識を切り分ける

思い込みや先入観は、生産性の高い仕事をする際、とても邪魔な存在です。「現場」「現実」「現物」を確認するために虫の目は必要です。

事実と認識を区別するためには、客観的データを使うことです。

「年々、展示会の参加者が少なくなっていると聞いた。どうなってるんだ」

このように、社長が発言したとします。しかし、

「5年連続で展示会の参加者は減っており、5年で20%減少している。しかし当社が期待している役職者の参加率は5年前と比較して15%ほど増えている」

と、このようにデータで確認すると、別の解釈ができます。現場にいたスタッフも「積極的に質問してくる方も多く、年々参加者の質は上がっています」と言うなら、社長が心配するようなことはなさそうです。

データを鵜呑みにしない

事実と認識を区別するのにデータは重要ですが、データだけで現状を把握するのは危険です。

現物を手に取ったり、現場で働く人たちと触れ合うなど、実際に「五感」を使って観察することが大事です。

データを見るかぎりでは、取り立てて問題なさそうに見えても、スタッフと面談してみたら、表情が暗かったり、以前と比べてネガティブな発言が増えたりすることもあります。

虫の目を使って、洞察力を鍛えることが大事です。

まとめ

冒頭に記したように、これからの時代、マネジメントを担う人には、ますます論理思考力が必要です。生産性を上げる取り組みが、以前よりもはるかに重要な因子となっているからです。

そのためには、鳥の目、虫の目といった「目」を持つことです。次世代の幹部を選ぶときに、そのような要件を入れることを私はお勧めします。