コンサルタントの酒井です。
拙著『いい人財が集まる会社の採用の思考法』を出版したこともあり、以前にも増して採用に関するご相談を受ける機会が多くあります。
そこで、今回のブログでは最近、特によくいただくある質問についてご紹介したいと思います。
質問
数年前までは、ナビサイトに掲載したり説明会に出展すれば、ある程度の人数が集まり、その中から採用できたのですが、今は集めることすら難しくなりました。
一体、どうしたらいいのでしょうか?
そう、この「集まらない」ことに関するご相談です。皆さまの会社ではいかがでしょうか。
今までは他社がやっているようなことをしていれば、ある程度の応募があったという企業も、今ではそうなってはいないということです。
株式会社ディスコが行った「2020年卒・新卒採用に関する調査―中間調査」によると
・エントリー数が前年度よりも増えた企業 28.9%
・エントリー数が前年度よりも減った企業 46.4%
・選考への応募者数が前年度よりも増えた企業 27.4%
・選考への応募者数が前年度よりも減った企業 47.6%
と、データからもエントリー数や応募者が減少傾向にあることがわかります。
就職生の行動量が減少している?
このデータを裏付けるのが、学生の就職活動の実態に関するデータです。
リクルートキャリア就職みらい研究所の「就職白書2019-2019年卒の採用・就職活動の振り返り」によると、就職活動を行う学生の行動量が全体的に減少していることがわかります。
・プレエントリー社数 2018卒 35.84社 → 2019卒 27.38社
・大学で開催される合同説明会・セミナーに参加する回数 2018卒 4.58回 → 2019卒 4.15回
・対面(社内、会場など)で開催されるものに参加した社数 2018卒 14.29社 → 2019卒 12.83社
・エントリーシートなどの書類を提出した社数 2018卒 15.82社 → 2019卒 13.46社
・適性検査・筆記試験を受けた社数 2018卒 10.76社 → 2019卒 8.93社
・面接など対面での選考を受けた社数 2018卒 9.26社 → 2019卒 8.19社
・内々定・内定を取得した社数 2018卒 2.54社 → 2019卒 2.36社
(※データは一人あたりの平均社数)
この傾向は、2020卒も続いていることが、主要各社の調査結果から判明しています。
集まらない…にどう対処すべきか?
では、企業様からの「集まらない」というご相談に対して、私がどんなアドバイスをしているか。
実は、その企業様の状態に合わせて180度違うアドバイスをしています。
1つ目は「集める」
2つ目は「集めない」
順番に詳しくお話ししたいと思います。
1.集める
「集まっていないなら、集めましょう」というシンプルなアドバイスです。
採用したいと思うような人財が自ら御社のホームページを検索して、応募してくるようなことはありません。自動的に集まってくるということは一部企業を除いてあり得ません。
つまり、自動詞でなく、他動詞で考える必要があります。
応募者が「集まる」という自動詞でなく、応募者を「集める」という他動詞で考えねばならないということです。
集めるうえで必要なのはマーケティングの発想です。
採用したい人物像を明確化する。そして、そのような人物は「どこにいるのか」「どんなメッセージを発信すれば興味を持つのか」を類推し、広告媒体やイベントへの参画、紹介会社利用など、求人の広報手法を選定していきます。
主な広報手法は次のようなものがあります。
・就職サイト(大手・特化型)、自社サイト、SNSなどのWEBメディア
・求人情報誌や採用パンフレットといった紙媒体
・合同説明会や学内セミナーなどのイベントプロモーション
・大学就職課・研修室訪問、紹介会社活用
他にも、インターンシップ実施、リクルーター制度、リファラル(社員紹介)などやり方はいくらでもあります。
会社ごとに最適なやり方は何なのか、現状(予算、体制、前年実績等)を踏まえて客観的にアドバイスをさせていただいています。
いずれにしても前提となるスタンスは、「今成果が出ていないならば、今のやり方を改善するほかない」ということです。
無数にあるやり方をとにかく色々やってみる。いい人財を集めている会社に共通しているのは無数の「試行錯誤」を繰り返しているということです。
私のコンサルティング先が1年目から結果を出すのは、高速に試行し、高速に検証・改善を繰り返しているからにほかなりません。
色々と試行し、「集まっていないなら、集めましょう」
2.集めない
「そもそも必要以上に集める必要はありません」というアドバイスです。
極論を言えば、10人採用したいなら、採用基準を上回る10人を集めて、動機づけし、内定承諾を得られればベストなのです。
なぜなら、集めたら集めた分、時間と費用と労力がかかります。
集めた母数が多いだけ、会社説明会実施、選考スケジュール調整、内定者フォローなど採用業務は煩雑になりますし、そこに関わる社員の人件費、会場費は雪だるま式に増えていきます。
中小企業庁の「2015年版 中小企業白書」によると、採用専任担当者がいる中小企業は全体のわずか5%程度。その他の中小企業は、社長、人事担当者、各部門の責任者が日々の業務と兼任しています。
また自社とマッチしない人を集めるということは、応募者にとっても時間の浪費となることも忘れてはなりません。
あることに時間を使うということは、他の時間を捨てるということです。つまり、その人が本来費やすべき時間を奪っていることになるのです。
無尽蔵に集めるのはお互いにとってやめるべきと私は考えています。
そのうえで、採用目標人数から逆算した最適な候補者集団形成と採用プロセスの改善をアドバイスしています。
・採用基準を下回る人が応募してこないようにするメッセージに設定
・会社説明会から選考ステップへのCV率を上げる工夫
・入社動機を高める選考ステップの改善
・内定者フォローの内容と手順 など
私がお手伝いしたコンサルティング先に知名度が低く、エントリーがとても少ない会社がありました。
知名度はそんなに簡単に上げられるわけではありません。だから、会社説明会を企画して募集をしても、ほとんど集まらない現状がありました。
そこで会社説明会のコンセプトを変更しました。1:1か1:2の個別就職相談会という形にしたのです。営業で言えば、個別商談会のようなイメージです。
相手の課題、ニーズを確認しながら、自社が合うところ、合わないところをリアルに紹介していきます。お互いのことを十分に理解したうえで、選考に進むことを提案するのです。
その結果、驚異的なコンバージョン率になりました。なんと毎回100%選考に進むのです。
知名度が低く、なかなか応募者を集められない会社ほど、このような工夫が必要です。集める数だけでなく、採用プロセスの見直しも合わせて検討していきましょう。
採用プロセスの「どこ」に問題があるのか?が解決の糸口
いかがでしょうか?
採用目標が達成していないなら、採用プロセスのどこかに問題があります。
自社と採用市場を客観的に捉えたうえで、どのような戦略を立てるか、それにより採用結果は大きく変わっていきます。
今、ZOOMを使った採用相談会を随時実施していますので、お問い合わせいただければ客観的に戦略策定のアドバイスをさせていただきます。