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戦わなくても勝てる経営戦略?ブルーオーシャン戦略とは
「競合他社が少なかったら、もっとシェアを取れるのに…」
「あっと驚く商品があれば、営業活動も楽だろうな」
「他社がまだ出していないあの領域ならいけるだろう!」
戦わずに勝つことができたら、どんなに幸せだろう…経営者であれば、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
ブルーオーシャン戦略とは、フランスの欧州経営大学院教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱された、競合相手がいない、もしくは少ない未開拓市場を切り開いていく経営戦略です。
ブルーオーシャンは市場として未開拓ですのでライバルが存在しておらず、市場の成長性が大きい・ローコストで勝負できる・利益の伸びが大きいというメリットがあります。
例えば任天堂の「Wii(ウィー)」は、ブルーオーシャン戦略で市場開拓に成功した事例です。これまでゲームをやらなかった中高年や小さな子どもなど、新しいターゲットに目を向け、体感覚を使ったゲームで新市場をつくることに成功しましました。
ブルーオーシャンの経営戦略で成長し続ける会社は作れるか?
戦わなくても勝てる素晴らしい経営戦略に思えるブルーオーシャン戦略ですが、誰もが強い経営・成長し続ける会社は作れるのでしょうか。
答えは「難しい」です。理由は3つあります。
理由1:いつか「レッドオーシャン」になる
「い・ろ・は・す」をご存知ですか?
これまでミネラルウォーターといえば、「無味の水」もしくは「炭酸入りの水」。味や香りのするミネラルウォーターでヒットしたものはありませんでした。
ミネラルウォーターに見えるけれどりんごやみかん味のする「い・ろ・は・す」は、これまで職場や甘い物を飲むことをためらっていたビジネスパーソンなどから大ヒット。自動販売機やコンビニの棚が品薄状態…ということも珍しくありませんでした。
しかし現在、どうでしょうか。
「い・ろ・は・す」はもちろん、サントリー天然水、miu、アサヒおいしい水、キリン晴れと水など、国内大手の飲料メーカーはもちろんスーパーやドラッグストアのプライベートブランドでもフレーバーウォーターが発売されるようになりました。
つまり、ブルーオーシャン戦略をとったとしても、競合のいない市場でビジネスを続けられるわけではないのです。
ヒット商品であればあるほど、同じような商品を発売しようと考える企業は多くなります。技術力などで他社が開発できない商品であれば、ブルーオーシャンは保たれるかもしれません。しかし、フレーバーウォーターのように既存の商品にアイデアをプラスして…というものだと、競合他社もすぐに追いついてしまいます。その結果、価格競争に巻き込まれ、当初の予定より利益が確保できなかったということもありえます。
理由2:ヒット商品を100%予測することはできない
経営戦略として、新しい商品を開発し、未開拓の市場を切り開くことも大切です。しかし、この経営戦略を成功させることは極めて難しいです。
企画段階から消費者の意見を取り入れ、多くのモニターに何度も使ってもらって改善を繰り返し満を持して発売したのに、売れ行きがイマイチ…WEBで評判を確認してもあんまりパッとしない、ということはありませんか。
もちろん大ヒット商品は存在します。AMAZONや書店にも「〇〇が売れた理由」「こうすれば売れる!~」「〇〇が売れ続ける理由」といった本が多く並んでいます。
しかしこうした成功法則は、上手くいった例を後付で整理して語っているものがほとんどです。つまり、「絶対に売れる商品」「絶対に成功する事業」「絶対に成功する法則」はないのです。
ヒット商品の開発に依存する戦略は、競馬で生活費を稼ごうというぐらいリスクを伴うものです。データから予測することはできるかもしれませんが再現性が乏しいのが事実です。1つに賭けるのではなく、リスク分散することが大切です。その場合、開発費やマーケティング費なども数倍かかることを忘れないでください。
理由3:未開拓市場が少ない
ブルーオーシャンとは未開拓市場、つまりまだ誰も手をつけていない・やっていない市場です。
「まだ世の中にはない画期的な商品・サービスのアイデアを出してください」と言われたら、どれぐらいの方が出せるのでしょうか。また理由2でもお伝えしたように、そのアイデアが売れる・商品化できるとは限らないので1つではなく複数個挙げる必要があります。
ブルーオーシャン戦略では、新しい価値を提供できれば無限の潜在的市場があると言われていますが、様々なアイデアがビジネスモデル化された現在では、そう簡単に未開拓市場は見つかりません。また競争がない市場・これまで誰も手をつけていない領域は、そもそもお客様が少なく商品・サービスを売り出しても十分な利益を確保できないということもあります。
市場をひっくり返す経営戦略
競合がいない領域で付加価値の高い新商品を開発し、新しい市場をつくるブルーオーシャン戦略は、極めて不確実性が高い経営戦略です。イノベーションを起こさず、安定的に売上を上げられる成長戦略があったら、と思いませんか。
会社の継続的な成長、安定的な売上を生み出すのに必要なのは、商品力を強化することではありません。「戦う力」、つまり営業力やマーケティング力を強化することが必要です。
市場を作り出すのではなく、競合他社のシェアをひっくり返しながら市場を活性化させる。場合によっては成熟した既存市場(レッドオーシャン)を狙う、ターンオーバー戦略がオススメです。
営業力でシェアを拡大する営業戦略とは?
ターンオーバー戦略の基本は、すでに売れている商材・安定している事業に参入することです。ターンオーバー戦略では商品力で他社と差別化を図るのではなく、営業力・マーケティング力で差別化を図ります。
成熟した市場だと、ベテラン企業の営業力に敵わないのでは…と感じた方も多いのではないでしょうか。そんなことはありません。案外成熟市場では安定した事業の上にあぐらをかき、経営努力を怠っている企業が多いのです。
例えば、長年の夢だった素敵なレストランを郊外ではじめたとします。「美味しいもの・身体に良いものを多くの人に食べてもらいたい」そんな思いで、毎日、厨房に立っています。食材の仕入れは、大手業務卸に一括発注。パソコン1つで野菜から肉・野菜まで頼めるから、割高だけど便利と思い活用していました。
ある日、地元の農家が産地直送の野菜を届けるサービスの案内にやってきました。はじめは「一括で頼めた方がいいから…」と思い断ったものの、月に1回ぐらい、旬の野菜情報や珍しい野菜のレシピを持ってやってきたら、あなたはどう思いますか。
「発注が2箇所になるのは面倒だけど、こっちの方が新鮮だし何より無農薬。金額も変わらないから、一度頼んでみよう。レストランも地産地消のお店とうたえるし!」と思うかもしれませんね。
相手がどんな大手企業だったとしても商品の見せ方や伝え方、そしてお客様と信頼関係を構築することでシェアはひっくり返すことができます。差別化できない商品だったとしても、このように営業力だけで競合他社をひっくり返していくのがターンオーバー戦略の強みです。
ターンオーバー戦略をおすすめする業界・商品
商品ライフサイクルが成熟期に入りつつある業界は、ターンオーバー戦略のターゲットになります。
成熟期の業界では業界の慣習に慣れきっているケースが多く、営業努力をせずに現状を維持している企業が沢山いらっしゃいます。よって自社の営業力を強化することで、オセロの端や角をとるように一気にシェアをひっくり返すことも可能です。
もちろん、営業力の強化は簡単ではありません。しかし、ブルーオーシャン戦略のヒット商品を生み出すことよりは高い再現性があります。
営業力とは「信頼関係を構築する力」
ターンオーバー戦略では、商品力は二の次。営業力・マーケティング力で勝負をします。
扱う商品に差別力がなかったとしても、営業活動・マーケティング活動に注力することで、シェアを奪っていきます。何度もお客様とお会いして信頼関係を構築することができれば、商材に「信頼できる・相談できる=アフターフォローが良さそう」という付加価値を付けることができます。その結果、選ばれる商品・サービス、選ばれる人材、選ばれる企業になることができます。
ここで大切になるのが、商品ではなくお客様目線で物ごとを考える力を、営業全員がもつことです。パーソナルアプローチを軸とした「水まき」活動が、お客様との信頼関係に花を咲かせます。そしてこの花を枯らさない限り、お客様との関係は途切れることはありません。(※参考:水まき活動とは?)
商品の購入には、人間の感情や情緒が大きく影響します。信頼している営業担当者がお客様のことを思い、お客様目線で一生懸命に正しい提案をしようとすると、その労力に感謝し、お客様の営業担当者の気持ちに応えたいという感情をいだきます。お客様が「何を買うか」よりも「誰から買うか」に重きをおくことがあるのは、「あの営業さんの喜ぶ顔がみたい」「あの営業さんとこれからもいい関係を築きたい」という人間の心理が働くからです。
お客様との信頼関係を構築し、感情に働きかける。差別化できない商品・サービスでも、商品力に頼らず営業力でシェアをひっくり返し、市場を活性化する。これこそがターンオーバー戦略の真髄なのです。
まとめ
「ブルーオーシャン戦略」に代表される商品力に頼った経営戦略では、競合他社がヒット商品を追随したり、市場の動向によって経営状況が大きく左右されます。
成長し続ける会社・安定的に売上を上げ続ける会社になるためには、商品力ではなく営業力でシェアを拡大していく「ターンオーバー戦略」を選択することが鍵です。
営業力を強化するには、営業担当者のスキルに目を向けるのではなく、まずは「あり方」に目を向け行動を変えていくことが大切です。その方法をこちらのPDFでご紹介しておりますので、ぜひご確認ください。
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